「手縫い畳床研究会」からのお知らせ
今、手で作られた畳床、「手縫い畳床」が急速に失われつつあります。
昨今では、畳床は製畳機でつくられ、その材料も外国産のものが台頭する状況です。このままでは、近い将来、日本から伝統的な手縫い畳床の技術が失われてしまうかもしれません。
「手縫い畳床研究会」は、公益社団法人金沢職人大学校の本科・修復専攻科の6ヵ年の研修を修了した有志で結成した自主研究会です。
在学中にはじめて、伝統的な手縫いによる畳床の技術研修を体験したことが始まりです。当初は失われつつある技術の習得を目標にスタートしたのですが、こうした活動がマスコミ等の広報を通じて徐々に広まり、ついには重要文化財旧中筋家住宅や金沢市指定文化財旧涌波家住宅での保存修理に携わることになりました。大変ありがたいことに、学んだ技術を活かす場を得ることができました。
こうしたいくつかの保存修理の経験を通じ、先人達が作った手縫い畳床の技術の高さを学ぶことができました。また、ひとつひとつの修理作業を追跡調査することによって、使い続けるために、かなりの労力を注ぎ込んでいたこともわかるようになりました。そして、これほどまでに畳床が大切に取り扱われていたのかと改めて思い知らされることになり、少なくとも、今ある手縫いの畳床を大切にしなければならないとの認識に至るようになり、「締め直し」の技術の研究をはじめることにしました。
「締め直し」は従来からあった畳床のメインテナンス技術のひとつですが、その作業は、腰が抜けた既存の畳床に新たな糸を掛けて締め上げていくものです。まるで大きな雑巾でも縫っているような感じですが、ほんの数時間の作業だけでも、もとの腰を取り戻すことができるようになります。
最も気になる費用も、実際に施工して確認してみると、新調する畳くらいの費用を目安にしていただければ修理可能なこともわかってきました。また、もう少しきちんとした手間をかけさえすれば、新調したものとわからないくらいまでの状態に復旧できることもわかりました。堅くもなく、柔らかくもなく、長い間座っていても疲れない、手縫い畳床の心地よさを取り戻すことができるのです。
当研究会としましては、日本の文化財建造物を構成するもののひとつである手縫い畳床について、一枚でも多く次の世代に伝えていきたいと考えています。そのためには、指定文化財建造物等に使われているものを保存していくことが最善の方法ではないかと考えています。
つきましては、もし、保存修理の現場等で手縫い畳床に関するご質問やご要望などございましたら、下記、事務局宛にご連絡いただければ、ささやかではありますが、何らかのお手伝いをさせていただきたいと考えています。
なお、最後になりましたが、当研究会では技術研究のため、古い畳床の収集活動も行っております。もし可能なものなどございましたら、ご寄贈いただければ幸いです。
【実 績】
金沢市指定文化財旧涌波家住宅(金沢市) 「手縫い畳床の復原・締め直し」
重要文化財旧中筋家住宅(和歌山県) 「手縫い畳床の復原」
重要文化財時国家住宅(石川県) 「手縫い畳床の締め直し」
金沢市所有旧永井家住宅(金沢市) 「手縫い畳床の復原・締め直し」
金沢市指定文化財平尾家住宅(金沢市) 「手縫い畳床の締め直し」
【研究内容】
手縫い畳床に関すること
(1) 修理技術
(2) 新調技術
(3) 技術的な調査など
【連 絡 先】
手縫い畳床研究会
事務局 公益社団法人金沢職人大学校内 (担当) 立野、戸石まで
〒920-0046 金沢市大和町1番1号
TEL : 076(265)8311 FAX : 076(225)8314
△修理前の状況(畳3角を接地し、1角を持ち上げた状態で比較)
△締め直し修理後の状況