左官

 昔の家は、小舞掻きから始まり、荒壁・裏返しをして、土壁を使って斑直し・中塗をして、朱塗・群青などの上塗で仕上げられました。

 小舞掻きとは壁を塗る前に柱と柱の間に竹を編んで下地を作る作業です。この方法では、柱から柱・地面から上までの一辺が一枚の壁になっているので、柱や木枠の間ごとに石膏ボードを挟む小間切れの現在の工法より強い壁ができます。しかし、今ではこの技を持っている職人も少なくなりました。
 小舞掻きの次に行われるのが、下地の上に何度も泥を塗る作業です。泥は乾くと収縮するので、その上に塗って、乾かして、また塗ってをくり返します。きちんと乾かさないとひび割れしやすくなるので、じっくり時間をかけて仕上げます。

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 塗りには鏝(こて)を使います。塗るものの材質や塗る場所、例えば丸い所・角、によって使用する鏝が違います。
 どの場面でどの鏝を使うかを見極める力量も左官職人には必要です。また、材料の調合の比率を変えて、ざらざらの壁やつるつるの壁を作り出します。その比率を間違えると上手く仕上がりません。さらに鏝の使い方で表面の仕上がりが違ってくるので、きれいに仕上がるかどうかは職人の腕にかかっていました。

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 最後に朱塗・群青などの上塗で仕上げます。
 時には下部に漆喰を塗ることもあります。泥だけでは雨で流れてしまうので、水に強い漆喰で濡れやすい箇所を保護するのです。その上に型を作って海鼠壁のように模様を付けたりします。
 このように昔の家は、一年目に下地・二年目に上塗りというように大変手間がかかっていました。現代の家は外部はサイジングで内部はボードにクロス張り、というように現場での作業が随分少なくなっています。

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 泥の壁は湿気を取るので日本の風土に適しています。主計町などの古い町並みを残していくためにも、それを修復できる職人を育ていくことが職人大学校での課題となっています。